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バックインパクトの腰痛に対する効果の最終調査結果
西薗秀嗣1) 島典広2) 中本浩揮3) 河端将司3) 1鹿屋体育大学スポーツトレーニング教育研究センター
腰痛は、腰部における筋持久力の低下や姿勢保持筋の活動の低下によって生じる (McGill, 2002)。 事実,慢性腰痛患者では、脊柱起立筋の持久力が低下しており (Ng & Richardson, 1996; Umezu et al, 1998)、 姿勢保持に関わる腹横筋の筋活動が健常者よりも劣ることが報告されている (Hodges, 1996)。 腰痛予防や腰部疾患の進行を抑制することになる。
本研究において、バックインパクト装着状態では、 脊柱起立筋の筋持久力テスト後の姿勢動揺が少ないことが示された。 腰部の疲労状態は姿勢制御の低下につながることから(例えば,Vuillerme et al, 2002, 2006)、 筋持久力テスト後には姿勢の動揺は大きくなる。
つまり、バックインパクト装着時の姿勢動揺が少ないという結果は、 バックインパクトが脊柱起立筋の持久力保持に貢献したことを示す。 先行研究において、腰痛ベルト(コルセット)は筋活動を補助することによって、 脊柱起立筋の筋活動量を低下させ疲労を軽減させることが報告されているが(例えば,Cholewicki, 1999, 2004)、 バックインパクトが他のサポーターに比べても姿勢動揺が少ないことを考えると、 バックインパクトは、より効果的に筋活動を補助していたことが示唆される。
また、腰部疾患の患者においては、 姿勢保持筋の一つである腹横筋の活動が遅延するため (Hodges & Richardson, 1996; Richardson et al., 1999)、 転倒、転落などの外乱に対して脊柱の安定性を保持することができない (McGill, 2002)。 そのため、腹横筋の活動の遅延は腰部の疾患を悪化させる。
しかし、これに対し、本研究ではバックインパクト装着状態では外乱に対する腹横筋の活動が促進されることが示された。 バックインパクトはスポーツなど「動く」ことを前提に施されるテーピング処置に基づいており、 動きを制限する腹部への過度の圧迫を避けるために、腰部を外側から脊柱方向へ牽引する構造になっている。
このような牽引は、腹横筋や腹斜筋の伸張作用に働くと考えられるが、筋の適切な伸張は筋の反応を高める (Muraoka, 2004)。 つまり、バックインパクトは、腹横筋の伸張作用が生じる構造になっており、 これによって、姿勢制御筋の中でも重要な腹横筋の活動が促進されたといえる。
以上、有効性を検証するための実験を行い、海外の研究成績と比較検討した結果、 バックインパクトは、腰部疾患の原因となる腰部の筋持久力低下や姿勢保持筋の筋活動低下を改善できるため、腰痛の予防や腰部疾患の進行を抑制するために有効なサポーターといえる。 国立研究所データからみるバックインパクトの身体に及ぼす効果 chapter172014-10-18
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D. 実験結果 この総軌跡長を6名の平均値(標準誤差)で表したグラフを図3に示す。 体幹保持テストを行う前の安静立位の値を100%で正規化することで、日間変動によるバイアスを除去し、 体幹保持テストによる疲労の影響について検討した。 対応のある二要因分散分析の結果、交互作用が認められ(p < .10),Tukeyの多重比較の結果、 15分後のバックインパクト(腰痛ベルト、コルセット)と他の条件との間に単純主効果が認められた (p < .10)。
図2.疲労課題直後の重心動揺の軌跡(1例) 図2.疲労課題直後の重心動揺の軌跡(1例) 図3.重心動揺の総軌跡長の経時的変化
E. 考察本実験では、2分間の体幹保持テストを行わせ腰部の疲労状態を作り、 その後の重心動揺の経時的変化を検討した (Davidson et al, 2004).一般的に腰部が疲労することで姿勢制御が低下すると報告されている(例えば,Vuillerme et al, 2002, 2006)。 これは筋疲労による固有受容器系の変化と中枢性の運動制御の変化によるものと考えられている(例えば,Taylor et al, 2000)。 また、これまでの腰痛ベルトに関する先行研究によると、腰痛ベルトが筋活動を補助することによって、 脊柱起立筋の筋活動量が低下するという報告が多く見られる(例えばCholewicki, 1999,2004)。
実験の結果、 サポーター着用が重心動揺の経時的変化に影響を及ぼしたといえる。 このことは、筋疲労によって低下した姿勢制御筋の機能をバックインパクトが補助したためといえる。 また、体幹保持テスト中の筋活動をバックインパクトが補助することによって筋疲労が軽減され、 重心動揺の総軌跡長が小さくなった可能性がある。
この実験は、 西薗 秀嗣教授ならびに 国立研究所データからみるバックインパクトの身体に及ぼす効果 chapter162014-10-18
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全ての研究データからの 腰痛サポーター(腰痛ベルト、コルセット)が身体に及ぼす効果について 実験2バックインパクトは姿勢保持筋のコーディネーションを促進するか?実験方法A. 被験者 全例が大学体育学部に所属する者であった。
B. 実験の手順まず地面反力計上で30秒間の閉眼閉脚立位をとり、安静時の重心動揺を測定する。 その後、脊柱起立筋の疲労課題として、 Biering-Sorensen (1984) が提案した体幹保持テスト (Trunk holding test) を用いて、 下肢・骨盤を固定した状態で2分間の体幹水平保時を行った(Fig3)。 その後、課題直後、5分後、10分後、15分後でそれぞれ同様にして閉眼閉脚立位での重心動揺を測定した。 本実験は筋疲労を伴う実験であるため、試行間で3日以上の間隔をあけて一日1試行ずつ、 サポーター無し、既存のサポーター、バックインパクトの3条件をランダム化して実施した。
C. 測定項目(重心動揺)および測定方法重心動揺の指標は、足圧中心 (COP: Center of pressure) の10秒間の移動距離を総軌跡長として求めた。 測定には、地面反力計(9286型,Kistler社製)を用い、XYZの3軸方向への地面反力を計測した。 地面反力データは16ビットのA/D変換器(Power-Lab/16s, AD Instruments社製)を介して、 分析ソフト(Chart 5.11, AD Instruments社製)を用いて総軌跡長を算出した。 式は以下の通りである。 【計算式】について【式】: 総軌跡長=√{(Xi+1-Xi)^2+(Yi+1-Xi)^2} X=(Fx*az0-My)/Fz Y=(Fy*az0+Mx)/Fz ※X:圧力中心店のX座標
次回は、結果を報告します。
この実験は、 西薗 秀嗣教授ならびに
国立研究所データからみるバックインパクトの身体に及ぼす効果 chapter152014-10-17
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D. 実験結果について上肢挙上動作開始から腹横筋の活動開始までの潜時について、 サポーター無し、既存のサポーター、バックインパクト(腰痛ベルト、コルセット)の平均値を図1左に示した。 バックインパクト着用時の腹横筋の筋活動開始時間は他の条件よりも早期化したため、 サポーター無し条件を基準にした場合のサポーターあり条件の各被験者の反応潜時に関して(図1右)、 フリードマン検定を用いて各条件を比較した。 その結果,3群間に有意な差が認められ (χ2 = 6.3, p < .01),ウィルコクソンの符号付順位検定を行ったところ、 ザムストとバックインパクトの間の筋活動開始時間に有意な差が認められた (p < .05)。 一方,外腹斜筋と脊柱起立筋についてはいずれも各条件間で有意差を認めなかった。
E. 考察慢性腰痛者は受動的な外乱に対する脊柱の安定性確保が困難であるとされている(Panjabi, 1992; Oxland et al. 1992)。 上肢挙上動作においては、上肢動作が開始される前に体幹筋の先行的な活動によって体幹を固定させることが要求されるが、 慢性腰痛者では腹横筋が特異的に遅延していると報告されている (Hodges,1996)。 このことから腰部障害と腹横筋の機能不全とは密接な関係にあることが示唆されている (Henry and Hodges,2007)。 本実験では、その腹横筋活動開始時間がバックインパクトを着用することで早期化されたことから、 バックインパクトが腹横筋の収縮に対して効果的に働いたと考えられる。 筋腱複合体の直列構成体は緩んでいる時よりも伸張されている時の方が筋活動の潜時が短いことから(Muraoka, 2004)、 本実験ではバックインパクトの補助ベルトによる牽引力が胸腰筋膜を介して、 腹横筋を伸張させたことによって活動開始時間が早期化したと推察される。 この結果は健常人を対象としたものであるが、慢性腰痛者の腹横筋が特異的に遅延していることを考慮すると、 バックインパクト着用よる腹横筋活動の促進効果は非常に興味深い知見と考えられる.
この実験は、 西薗 秀嗣教授ならびに
国立研究所データからみるバックインパクトの身体に及ぼす効果 chapter142014-10-17
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目 的 外乱に対する体幹筋の活動開始までの潜時や、 筋疲労課題後の身体重心の動揺性 (姿勢保持) といった側面から新型ベルトと従来型ベルトの効果を比較する。
バックインパクト(腰痛ベルト、コルセット)は姿勢保持筋の反応を促進するか?実験方法A. 被験者 被験者は健常男子大学生6名(年齢22.9±3.8歳,身長170.1±5.1 cm,体重62.2±5.8 kg)で、 全例が大学体育学部に所属する者であった。
B. 実験の手順 (Fig1)被験者の姿勢保持に外乱を与えるために右上肢挙上動作を行わせた (Hodgesら, 1997)。 被験者は前方1mの光呈示ランプの前で安静立位を保ち、光の点灯に対して右上肢挙上45度を目安にできるだけ素早く挙上した。 被験者はこの課題をサポーターなし、バックインパクト、他社サポーターの3条件を各10回ずつ、計30回行った。 条件の順序は被験者間でランダム化した。
C. 測定項目(筋電図)および測定方法右上肢挙上課題中の身体右側の腹横筋-内腹斜筋(TrA-IO : Transversus abdominis-internal oblique)、 外腹斜筋(EO : External oblique)、および脊柱起立筋(ES : Erector spinae)の活動電位を導出した。 電極貼付部を除毛しアルコール綿で払拭した後、サンドペーパーで擦り電極間皮膚抵抗を落とした。 2個の表面電極(銀-塩化銀,直径5mm)を電極間距離2cmにて両面粘着カラーを用いて固定して貼付した。 貼付部位は,TrA-IOが上前腸骨棘から約2cm内下方 (Kulas, Schmitz, Shultz, Henning, & Perrin, 2006)、 EOが臍の高さと前腋窩線との交点、ESが第3腰椎棘突起より約3cm外側とした(Fig2)。 本研究でのTrA-IOの貼付部位は、解剖学的に腹横筋と内腹斜筋が融合しており、 また外腹斜筋に覆われていない部位として表面筋電図から導出可能とされている (Marshall & Murphy, 2003; McGill, Juker, & Kropf, 1996)。 導出した筋電図信号(EMG)は生体アンプ(AB-621G,日本光電社製)を用いて時定数0.03秒,高域通過1000Hzで増幅した。 データを記録後,オフライン上にて帯域通過10-500Hzで処理を行った。 また、電子ゴニオメーターを肩関節に取り付け、上肢挙上動作の開始時点を同定した。 これにより、上肢挙上動作開始から,体幹筋の活動開始までの潜時を計測した。
次回は、結果を報告します。
この実験は、 西薗 秀嗣教授ならびに
国立研究所データからみるバックインパクトの身体に及ぼす効果 chapter122014-09-16
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重心動揺についての実験 そのため、健常者にトランクホールディングを2分間課すことで、 腰部の疲労状態を作り、重心動揺の経時的変化を検討しました。
図2は、立位での重心動揺の1分間の総距離について、安静立位を基準にしてまとめたものです。 直後では、疲労の影響を受け大きく動揺しますが、時間の経過とともに減少します。
この減少に関して、サポーター(腰痛ベルト、コルセット)の効果を検討したところ、 15分後の重心動揺に関して、 バックインパクトは、サポーター無し及びザムストと比較して有意に安定しているという結果が得られました。
下図は、被験者一人の重心動揺の様子を表したものです。 明らかにバックインパクトの重心動揺が小さいことが見てとれます。
この実験は、 西薗 秀嗣教授ならびに 国立研究所データからみるバックインパクトの身体に及ぼす効果 chapter112014-09-10
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腹横筋反応時間 サポーター無し、ザムスト、バックインパクトの平均値とサポーター(腰痛ベルト、コルセット)無し条件を基準にした場合の サポーターあり条件の各被験者の反応潜時を図1に示しました。
各サポーター条件の平均反応時間の間に意味のある差が認められるかどうかを検討するために、 一要因分散分析を行いましたが、これらの結果は有意ではありませんでした。
しかしながら図から見られるように、 全体的にバックインパクト < ザムスト < サポーターなしという関係が見て取れます。
そこで,数値自体の差ではなく、 各被験者の中でどのサポーターが一番素早い腹横筋の活動が見られたかの順位を用いて、 フリードマン検定を用いたところ、 3群間に有意な差が認められ (χ2 = 6.3, p < .01)、 ウィルコクソンの符号付順位検定を行ったところ、
今回の実験では、被験者は全てアスリートの健常者であったため、 サポーター無し条件でも十分に早い筋活動であり、これよりも短い反応を示したことは、 バックインパクトが姿勢保持に関わる腹横筋の活動を促進したといえます。
この実験は、 西薗 秀嗣教授ならびに 国立研究所データからみるバックインパクトの身体に及ぼす効果 chapter92014-08-22
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【目的】
【方法】 持ち上げ動作には、土台に取り付けられたチェーンに 、張力計(model 1296F, TAKEI Inst, Japan) を介して金属製の支柱を取り付けた機器を使用した(図1)。
(図1)
被験者は膝蓋骨上縁の高さで金属支柱を把持し、膝関節と肘関節の伸展位を保持したまま、 体幹前傾位から垂直に引き上げるように等尺性の体幹伸展動作を行った。
被験者は初めに最大張力発揮(MVC)を2回実施し、 得られた最大張力に対して25%、50%、75%MVCに相当する張力発揮をランダムで2試行ずつ行った。
設定した目標値の張力発揮が遂行できるように、張力モニターでフィードバックしながら行った。 これらの試行を3つの条件(腰痛ベルトなし、バックインパクト着用、他社コルセット着用)で、 ランダムに2セットずつ実施した。
各試行間には十分な休憩を入れ、疲労の影響を取り除いた。
腹腔内圧は圧センサー(直径1.6mm, MPC-500, Millar)を肛門から15cm挿入して直腸圧から得た。
次回は、結果報告をします。
この実験は、 西薗 秀嗣教授ならびに
国立研究所データからみるバックインパクトの身体に及ぼす効果 chapter72014-07-04
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まず、プレ実験を行い研究の方向性を決めていく。
プレ実験2のイントロダクションプレ実験2のイントロダクションを下記にあげます ○被験者1名を対象に先日の実験の一部を行いました。 ○被験者数1名ということで統計処理は行っていません。 ○被験者は陸上短距離走で高い競技力を持っており、100m走では鹿児島県の今季ベストタイムの記録を持っている
実験結果のグラフの傾向に基づいて結果報告 考察をいたします。 あくまでデータ数が1名なのでこれらの結果が全員に当てはまるか
実験2 実験方法サポーター着用時と非着用時の重量挙げにおける筋活動について調査しました。 今回は便宜的に重量挙げとしました。
実験課題は、膝関節伸展を確保したままで上体を90度に屈曲させた状態から、 20kgのダンベルを握り腰部を伸展させるように挙上させるという課題です。
この区間の脊柱起立筋の活動量(上図)、 腹横筋に関して筋活動のばらつきの指標であるCV(次回報告予定)を求めました。
次回は、実験結果から読み取れる、 バックインパクト(腰痛ベルト、コルセット)の示唆する可能性について報告をします。
この実験は、 西薗 秀嗣教授ならびに 国立研究所データからみるバックインパクトの身体に及ぼす効果 chapter42014-06-25
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以下の指標が新型・従来型腰痛ベルト(コルセット)今回の実験の目的を達成する案としてあがり、 プレ実験を行った。
実験に関しては、下記の3種類の方法で行う。
回を追って、実験方法、結果、また実験の結果から読み取れる、 読者の皆さんには、とっつきにくい専門用語が今回は並んでしまい申し訳ないが、
脊柱起立筋の筋持久力評価としては Biering-Sorensen (1984) が提案した、 腰部保持テスト (Trunk holding test) を用いる。 筋疲労を評価するための客観的指標には筋電図を使用する。
筋電図は筋疲労によって、 周波数 (波の頻度) や筋放電量 (平均振幅) が低下することが知られ(例えば,木竜, 1997; 五味, 2007)、 筋疲労の評価手法としての妥当性も確認されている (Ng & Richardson, 1996)。 筋のコーディネートを調査するために,歩行中の筋活動の放電パターンについて検討する。
腰痛患者は健常者に 比べて歩行中の脊柱起立筋,腹横筋の筋放電パターンの変動性が大きくなる。 これは、腰痛患者においては,歩行に動員される筋の活動パターンが正常に作用し ていないことによるものと考えられる。
この筋放電パターンの変動性は腰痛トレーニングによって改善することから、 仮に、新型腰部ベルトを付けることによっ て歩行中の筋放電パターンに変化が出た場合は、 機能的側面の改善にかなりの効果があるといえる。
また、前述の通り,腰痛患者は体勢を崩したときの筋の反応時間が遅延する。 これは、腰部の受傷によって姿勢保持機能が上手く働かないためと考えられている。 そこで腰部ベルト着用時と非着用時の反応時間を比較することによって姿勢保持機能への効果を検討する。
さらに、腰痛患者は健常者に比べ、立位での重心動揺が大きく、疲労時にはそれが顕著になるとの知見か ら、 新型・従来型腰痛ベルト(コルセット)着用時、非着用時で腰部保持テストによって疲労した後の重心動揺について比較する。
次回は、 腰痛患者は健常者に比べて、 姿勢保持に関わる筋のリアクションが遅くなるという知見からの実験の報告をします。
この実験は、 西薗 秀嗣教授ならびに |